外科・消化器外科の診療内容
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特色
名古屋大学医学部附属病院 消化器外科一・乳腺内分泌外科(旧腫瘍外科)とその関連病院で修練を積み、消化器疾患、乳腺疾患、ヘルニア、外傷等に深い造詣を持つ外科医
医療連携
名古屋大学医学部附属病院、産業医科大学病院
認定・研究等
愛知県がん診療拠点病院、マンモグラフィ検診施設、全国労災病院外科共同研究、術後補助化学療法としてmFOLFOX6療法を実施する大腸がん患者を対象とした化学療法誘発性末梢神経障害に対するPC-SODの第Ⅱ相プラセボ対照二重盲検試験
外科・消化器外科Q&A
鏡視下手術
Q1) 希望すれば誰でも鏡視下手術を受けられますか?
A1) 鏡視下手術は直径2~10mmほどのカメラで行うため、手術の際に見える視野が限られています。その為、内臓脂肪が多かったり、腹部手術の既往歴など癒着の激しい場合は、初めから開腹手術になることがあります。また、患者さんの安全のため、手術の途中から開腹手術に移行する場合もあります。
Q2) 鏡視下手術は、どこの病院でも行える手術ですか?
A2)鏡視下手術は、光学機器類を始めとする最新の器具類を揃えている病院であることはもとより、それらを間違いなく使いこなし、不測の事態にも迅速に対応できる外科医の存在が必要となります。当院では、この新しい手術方法に精通した、高度な技術を持つ医師が日々研鑽を重ね、患者さんの診療にあたっています。
Q3) 鏡視下手術では、本当に手術あとが残らないのですか?
A3) 手術のあとが全く残らないわけではありません。しかし、従来の手術のように手術部位を大きく切開するのではなく、身体に直径5~30mm程度の穴を数ヵ所あけて、そこからカメラや小さな鉗子類等の器具を挿入し手術を行います。また、開腹術のように縦に切開せず、横向きの切開を用いるので、手術あとはほとんどわからなくなります。
Q4)かかりつけ医は近所の診療所なのですが、鏡視下手術は受けられますか?
A4)中部ろうさい病院では、地域の医療機関と連携を取り、患者さんのニーズに応えられる体制を整えております。直接、当院の外来を受診されても構いませんが、その場合、診察や検査を最初から行っていただくことになり、患者さんへの負担も増えてしまいます。余計な検査や重複する検査を省き、迅速な対応をさせていただくためには、事前にかかりつけ医の先生とよくご相談いただき、紹介状をお持ちいただくか、当院の地域医療連携室を通して紹介していただくことをお勧めしております。ご不明な点がありましたら、当院の地域医療連携室へご相談ください。
地域医療連携の詳細、お問い合わせ先はこちらからご覧いただけます。
乳がん検診
Q5) 乳がん検診は何歳から受けることができますか?
A5)どなたでも検査できますが、一般的に乳がん検診は30歳以上の女性に勧められております。
Q6)費用はいくらくらいかかりますか?
A6) がん検診は保険の対象外となりますので、料金は自費となります。検査の種類等によって料金は変化しますが、6,000円~12,000円程度となります。
名古屋市にお住まいの40歳以上の女性の方は、2年度に1回500円で検診を受けることができます。(問診及びマンモグラフィーが対象です。)
Q7) いつ行われていますか?
A7)当院では月曜日から金曜日までの午後に乳がん検診を行っております。また、木曜日の午後2時からは乳腺の疾患に特化した、乳腺外来も行っております。どちらの場合も、希望される方は、まず当院外科にて予約を取ってからご来院ください。(℡052-652-5511 予約受付時間・平日15:00~17:00)
鏡視下手術について
鏡視下手術とは
鏡視下手術は、腹腔鏡や胸腔鏡と呼ばれる直径2~10mmの細長いカメラスコープを体に挿入し、鏡視下手術専用の特殊な器具を使い、モニター画面を見ながら行う手術です。
身体に大きな傷を付けずに行うことができるため、傷跡も小さく目立たず術後の痛みが少なくなるとともに、術後の早期回復、社会復帰ができる「やさしい手術」といわれています。
このため、急速に普及してきている手術ではありますが、手術中の視野が2次元のモニター画面上であるなど、特殊性が非常に高く、高度な技術を要する手術でもあります。
決して簡単な手術ではなく、また、この手術特有の合併症があることも理解しておく必要があります。
当院には、各領域に鏡視下手術を行うことができる医師が勤務しております。また、多職種が協力して技術向上を図り、多領域にまたがる疾患にも対応しています。「このような病気に鏡視下手術はできないか」など、ご相談や疑問がありましたら、お気軽に受診してください。
具体的には...(腹腔鏡手術の場合)
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おなか(腹腔内)を炭酸ガスでふくらませる。
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内視鏡を挿入するための切開(10~30mm)を行い、おへその周囲から直径2〜10mmの細長い内視鏡を手術部位に挿入する。
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鏡視下手術専用器具を挿入するための切開(5~30mm)を数ヶ所行い、当該箇所から専用器具を挿入し、テレビモニター上に映し出された映像を見ながら手術を行う。
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麻酔は主に全身麻酔を用い、呼吸、循環の監視下で手術を行う。
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従来の手術では20~30cm程おなかを切開(開腹)していたのに比べ、傷が小さく済むことが最大の特徴です。
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鏡視下手術は健康保険が適用されています。
【開腹腹手術への移行について】
鏡視下手術の開始後であっても、以下のような場合は患者さんの安全を守るため、開腹手術に切り替えることがあります。
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患者さんが以前に受けられた腹腔内手術や腹腔内の炎症の影響により癒着が認められる場合
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術中に出血があり、止血が難しい場合
鏡視下手術のメリット・デメリット
手術による身体への負担が比較的軽いため、手術後は開腹手術より患者さんにとって楽な場合が多いですが、決して簡単な手術ではありません。
患者さんには、主治医の説明の下、鏡視下手術のメリット・デメリットを十分に理解し、納得して手術を受けていただけるようご説明しています。
【メリット】
- 切開部位が小さく、術後の痛みが比較的軽度ですむ。
- 傷が小さく、美容的に優れる。
- 術後の早い時期から歩行や食事ができる。
(開腹手術に比べ臓器が空気に触れることが少なく、腸運動の回復が早くなります。
このため、ほとんどの場合、手術翌日から食事をとることが可能です。) - 腹腔内で炎症が起きにくいため、術後の癒着がなく、腸閉塞になりにくい。
- 回復が早いため、入院期間が短くなり、早期の職場復帰、社会復帰が可能となる。
【デメリット】
- モニター画面を見ながらの操作となるため、術中の視野が狭く、高度な技術を要する。
- 手術操作の制約のため、手術時間が長くなる。
- 腹腔内に炭酸ガスを入れる必要があるため、呼吸と循環に影響を与えることがある。
(高炭酸ガス血症や不整脈など)
腹腔鏡下手術の合併症について
おなかを炭酸ガスでふくらませて手術を行うため、特有の合併症が起こりうる場合があります。
- 心臓、肺への負荷
腹腔内圧、気道内圧が上昇し、循環血液量が減少するため、心臓や肺に負担がかかります。術前検査で心肺機能に異常がないかチェックし、手術中は腹腔内圧、気道内圧を測定しながら手術を行います。 - 下肢静脈血栓症、肺塞栓症
足の静脈に血栓(血液のかたまり)ができることを下肢静脈血栓症、また、血栓が肺に達し、肺の血管に詰まることを肺塞栓症といいます。肺塞栓症は致命的な場合がありますが、その発生頻度は0.1%程度と言われています。それらの予防策として、患者さんには足に弾性ストッキングを履いていただいています。 - 高炭酸ガス血症
血液中の炭酸ガス濃度が高くなることがあるため、手術中に不整脈を起こすことがあります。その対策として、呼気中や血液中の炭酸ガス濃度を見ながら手術を行います。また、極めてまれではありますが、血液中に炭酸ガスが入り込むガス塞栓を起こす場合があります。 - 術後肩痛
手術を受けた方の3割程度に起こりますが、軽度で数日で消失することが多いです。
当科の主な鏡視下手術実績
手術・処置名 | 件数(平成29年実績) |
---|---|
腹腔鏡下ヘルニア手術(大腿ヘルニア) | 1 |
腹腔鏡下胃切除術(悪性腫瘍) | 6 |
腹腔鏡下胆嚢胞切開術 | 1 |
腹腔鏡下結腸悪性腫瘍切除術 | 26 |
腹腔鏡下結腸切除術 | 3 |
腹腔鏡下鼠径ヘルニア手術 両 | 10 |
腹腔鏡下胆嚢摘出術 | 54 |
腹腔鏡下虫垂切除術 | 14 |
腹腔鏡下直腸切除・切断術 | 14 |
腹腔鏡下副腎悪性腫瘍手術 | 1 |
腹腔鏡副腎髄質腫瘍摘出術 | 1 |
乳がん検診について
乳がんとは
乳がんは、乳房の中にある乳管や小葉という組織にできるがんで、40歳以上の女性に多く発症します。2013年の乳がんで死亡した女性の数は約13,000名で、女性のがん死亡者の約1割を占めています。ただし、早期に発見し、治療を行えば予後の良いがんであることも知られており、検診の重要性が特に高いがんといえます。主な症状としては、乳房のしこり、乳房のひきつれやえくぼなどの皮膚の変化、乳房周辺のリンパ節の腫れなどがあります。
当院で受けられる乳がん検診
マンモグラフィ検診
乳腺専用のX線検査です。広範囲に読影可能で、微細な石灰化の段階の腫瘍を発見することができます。
若い女性には向きません。(若い患者は乳腺が多く、乳腺とがんの区別がしにくいため。)
透明なプラスチック板に乳房を片方ずつはさんで撮影するため、痛みを伴うことがあります(痛みの感じ方は人それぞれです)。また、X線を使用するため、多少ではありますが放射線を浴びることになります。
超音波検診(エコー)
手で触れただけでは判別しづらいしこりを発見することができます。X線照射や痛みが無く妊娠中でも検査できるのがメリットですが、微細石灰化は発見しにくいのが欠点です。比較的若い女性(20~30代)向きの検診です。
主な疾患
疾患名 | 疾患の簡易解説 |
---|---|
食道癌 | 食道癌は、初期にはほとんど自覚症状がありません。進行すると飲食時の胸の違和感、飲食物がつかえる感じ、体重減少、胸や背中の痛み、咳、声のかすれなどの症状が出ます。検査には、上部消化管内視鏡検査と上部消化管造影検査(バリウム透視検査)、CT検査、MRI検査、PET検査、腹部超音波検査、超音波内視鏡検査などを行います。治療法は、内視鏡的切除、手術、放射線治療、薬物療法があり、単独または組み合わせた治療を行います。 |
胃癌 | 胃癌は、胃の壁の内側をおおう粘膜の細胞が癌細胞となり発生する悪性腫瘍です。症状には、胃の痛み・不快感・違和感、胸やけ、吐き気、食欲不振、食事がつかえる、体重が減る、貧血、黒い便(血便)などです。検査では、上部消化管内視鏡検査や上部消化管造影検査(バリウム透視検査)CT検査、MRI検査、PET検査、腹部超音波検査、超音波内視鏡検査などを行います。治療法は、内視鏡的切除、手術、薬物療法があり、単独または組み合わせた治療を行います。 |
肝臓癌 | 肝細胞癌は、肝臓の細胞が癌化した悪性腫瘍です。肝細胞癌の発生には、肝炎ウイルスの感染、アルコール性肝障害、非アルコール性脂肪肝炎などによる肝臓の慢性的な炎症や肝硬変が影響しています。 肝臓以外の臓器にできた癌が、肝臓に転移したものを転移性肝癌といいます。転移性肝癌は肝細胞癌とは区別し、最初に癌ができた臓器(原発)に準じた治療を行います。 初期には自覚症状がほとんどありません。腹部超音波検査、CT検査、MRI検査などによる画像検査、肝機能、腫瘍マーカーなどの血液検査です。治療は、肝予備能(肝機能がどのくらい保たれているか)や、肝臓以外の臓器に転移があるか、脈管(門脈、静脈、胆管)への広がり、癌の個数、大きさなどに基づいて検討します。肝切除、穿刺局所療法(ラジオ波焼灼療法、経皮的エタノール注入、経皮的マイクロ波凝固療法)、塞栓療法(肝動脈化学塞栓療法、肝動脈塞栓療法)、薬物療法、免疫療法などがあります。 |
胆道癌 | 胆道癌は、胆道にできる悪性腫瘍です。周囲のリンパ節、肝臓、肺などの臓器に転移したり、膵臓などの周囲の臓器に浸潤(癌が周囲に染み出るように広がっていくこと)したりすることがあります。黄疸、右上腹部痛、体重減少などの症状があります。血液検査、腹部超音波検査、CT検査、MRI検査、PET検査、内視鏡検査などで検査します。治療は手術、薬物治療です。 |
膵臓癌 | 膵臓癌は膵臓にできる癌で、悪性腫瘍です。腹痛、食欲不振、腹部膨満感、黄疸、腰痛、背部痛などが症状です。糖尿病の発症や増悪がみられることがあります。血液検査、腹部超音波検査、CT検査、MRI検査、PET検査、超音波内視鏡検査等を行います。治療には、手術、薬物療法、放射線治療があります。手術のみ、もしくは手術と薬物療法、放射線治療を組み合わせた治療(集学的治療)を行います。切除できない場合は、主に薬物療法や薬物療法と放射線治療を組み合わせた治療を行います。 |
大腸癌 | 大腸癌は、大腸(結腸・直腸)に発生する癌で、悪性腫瘍です。腺腫という良性のポリープが癌化して発生するものと、正常な粘膜から癌発生するものがあります。早期の段階では自覚症状はほとんどなく、進行すると、血便(便に血が混じる)、下血(腸からの出血)、下痢と便秘の繰り返し、便が細い、便が残る感じ、おなかが張る、腹痛、貧血、体重減少などの症状があります。注腸造影検査、下部消化管内視鏡検査、腹部超音波検査、CT検査、MRI検査、PET検査などを行います。治療には、内視鏡治療、手術、薬物療法、放射線治療などがあります。 |
乳癌 | 乳癌は乳腺の組織にできる癌で悪性腫瘍です。乳房のしこり、乳房のえくぼやただれ、左右の乳房の形が非対照になる、乳頭から分泌物が出る、などが症状です。男性にも発生することがあります。乳房の周りのリンパ節や、肺、肝臓、骨、脳などに転移することがあります。乳癌は自分で見つけることのできる癌の1つです。日頃から入浴や着替えのときなどに、自分の乳房を見たり触ったりして、セルフチェックを心がけましょう。セルフチェックで見つけられないこともあるため、定期的に乳癌検診を受けることは非常に重要です。診察(視触診)、マンモグラフィー、超音波検査、針生検検査、CT検査、MRI検査、骨シンチ検査、PET検査等を行います。治療法には、手術、放射線治療、薬物療法があります。 |
胆石症 | 胆道にできた結石の総称です。結石の存在部位により、胆嚢結石、総胆管結石と呼ばれます。上腹部痛、背部痛、肝機能障害、発熱、黄疸などを生じます。検査は血液検査、腹部超音波検査、CT検査、MRI検査、内視鏡検査、超音波内視鏡検査等を行います。治療は内視鏡的結石所毛、手術です。多くは腹腔鏡手術が行われています。 |
鼠径ヘルニア | 鼠径部(足の付け根)に生じるヘルニアの総称が鼠径ヘルニアです。一般的に"脱腸"と呼ばれている病気です。腸や腸を覆う脂肪組織、卵巣、膀胱などが腹壁に生じた欠損部から飛び出します。内臓の脱出により鼠径部に膨らみができ、違和感や不快感、痛みを伴うこともあります。多くの場合は腹圧がかかったときに飛び出し、仰向けになると引っ込みますが、放置すると次第に大きくなっていき、内臓がはまりこんで元に戻らない状態(嵌頓)となることがあります。治療は手術です。腹腔鏡手術も行われています。 |