脳神経内科・脳卒中科の診療内容

特色

亀山部長診察風景

当院では、高い診療実績を持つ整形外科、リハビリテーション科を擁しており、神経障害の急性期治療からリハビリ、治療後のケアまでトータルに行なっています。また、当科は、各医師が脳卒中、末梢神経疾患、脊髄疾患など、異なった専門の領域を持ち、高いレベルの治療を提供できる体制が確立されています。急増している認知症にも対応すべく環境を整備しております。


医療連携

神経疾患の性質上、最も密接に連携しているのは、整形外科とリハビリテーション科です。その他では、耳鼻咽喉科、眼科などと患者さんの病状によって連携を図っています。 また、当院は、MRI、64列マルチスライスCT、脳血流シンチ、電気生理検査機器などの診断機器を導入しています。


認定・研究等

認定施設

  • 日本神経学会教育施設
  • 日本脳卒中学会認定研修教育病院
  • 日本内科学会
  • 日本脳ドック学会

研究内容

  • 脳卒中に関連する予防法、治療法
  • 末梢神経障害
  • 脊椎・脊髄疾患
  • 神経疾患一般

主な疾患

疾患名 疾患の簡易解説
慢性炎症性脱髄性多発神経根炎(CIDP) CIDPとは四肢の筋力低下やしびれ感・知覚鈍麻が2ヶ月以上にわたりゆっくり進行する末梢神経の炎症性疾患です。早期発見・早期治療が非常に重要です。治療にはステロイドホルモン剤の大量投与、血液製剤である免疫グロブリンの大量療法、血漿交換などを行います。血管炎に伴う神経障害や糖尿病性神経障害などとの鑑別が必要であり、神経伝導検査や髄液検査を行い診断します。(厚労省指定難病)
ギラン・バレー症候群(GBS) GBSとは風邪症状や下痢症状の治った後、主に運動神経を攻撃する自己抗体が血液に出現し、末梢神経の炎症が起こり手足の運動麻痺をきたす疾患です。数日・数週間で自然回復する例もありますが、重症例では呼吸筋麻痺や重度の不整脈を起こすことがあり、歩行障害などの後遺症が残る場合もあります。早期診断・治療(免疫グロブリン投与・血漿交換)が非常に重要です。神経伝導検査や髄液検査を行い診断します。
筋萎縮性側索硬化症(ALS) 筋萎縮性側索硬化症(ALS)とは脳および脊髄の運動神経細胞が変性(原因不明で死んでいく)のため、四肢・のど・舌の筋肉がだんだん萎縮して麻痺する病気です。筋力低下だけではなく飲み込みにくい・痰が出しにくいなどの症状が先行する場合もあります。呼吸筋の麻痺が進行すると人工呼吸器の装着が必要になります。残念ながら現在は根治させる治療法がなく、神経細胞保護剤による進行抑制や痛み・呼吸苦への対症療法が治療の中心になります。(厚労省指定難病)
パーキンソン病 パーキンソン病とは手足の振戦(ふるえ)やこわばり、動作緩慢、転びやすいなど運動症状を初発症状とする脳の変性疾患です。60歳以上の100人に1人の発症といわれます。抗パーキンソン剤の内服が有効です。レビー小体型認知症にも同様の運動症状が出現します。また神経変性疾患の進行性核上性麻痺、正常圧水頭症、多発性脳梗塞でもパーキンソン病に似た症状を呈します(パーキンソン症候群と呼ばれる)が、薬の効果があまりありません。抗精神病薬や胃腸薬の副作用でパーキンソン症状を呈することもあります。(厚労省指定難病)
脳梗塞 脳梗塞とは何らかの原因で脳の動脈が閉塞し、血流が途絶して脳の一部が壊死してしまう病気です。脳血管の動脈硬化が原因の脳血栓と、心臓でできた血栓や頚動脈壁のコレステロールのかたまりや血栓が脳内の血管に達して詰まる脳塞栓とがあります。脳の障害部位によって、半身麻痺やことばの障害、感覚障害などいろいろな症状が出現し、しばしば後遺症が残ります。発症から数時間以内であれば血栓溶解療法(t-PA静注療法)や血管内カテーテル治療で壊死に陥りかけた神経細胞を救済できる可能性があります。高血圧や糖尿病、心房細動、脂質異常症、慢性腎臓病、喫煙、肥満などが発症の危険因子です。
内頚動脈狭窄症 動脈硬化が進行すると頚動脈血管壁に余分なコレステロールが沈着し頚動脈の狭窄がおこります。そのため心臓から脳への血流が低下する、狭窄の原因であるプラークや血栓が一部はがれて多数の脳血管に飛散して詰まり多発塞栓をおこすなど脳梗塞のリスクが高くなります。また、一過性の麻痺や言語障害などの神経症状の出現と回復を来す一過性脳虚血発作(TIA)が起こることもあります。治療にかんしては抗血小板薬などの薬物治療に加えて頚動脈ステント留置術や頚動脈内膜剥離術を行う場合があります。頚動脈狭窄は無症候のまま脳ドックで偶然見つかることも多く、その場合も頚動脈超音波検査や頚動脈MRA、脳血流検査などを検討し、脳梗塞のリスク因子の管理や薬物治療など今後の対応を検討します。
重症筋無力症 重症筋無力症とは、末梢神経と筋肉のつなぎめで神経から筋への指令を伝える物質(アセチルコリン)が不足してしまうために、脳からの運動指令が伝わらず脱力のおこる自己免疫疾患です。瞼が下がる(眼瞼下垂)や物が二重に見える(複視)など眼の筋肉から発症することが多く、四肢や首の筋力低下が加わることもあります(全身型)。鼻声や、咬む、飲み込む力の疲労のため嚥下障害が起こることもあります。朝は調子が良くても、すぐ疲労して悪化するという時間によって症状が変動することが特徴です。重症筋無力症にはステロイドホルモン剤や免疫グロブリンの大量投与が有効です。眼筋型と全身型があり、全身型の一部の症例では免疫に関する臓器である胸腺を外科的に摘出することもあります。(厚労省指定難病)
多発性硬化症 大脳・小脳・脊髄・視神経に自己免疫による炎症が多数の部位におこり、手足の運動麻痺やしびれ感、ふらつき、排尿障害など多様な症状を呈します。若い女性に多く、回復しても再発を繰り返して障害が進行してゆくことが一般的です。急性期はステロイドホルモン剤や免疫グロブリンを使用して炎症を抑えます。その後は再発予防薬を用いて治療を継続していきます。(厚労省指定難病)
 糖尿病性神経障害 糖尿病性神経障害は網膜症・腎症とならぶ糖尿病三大合併症のひとつです。血糖コントロールが不良な状態が継続すると末梢神経の神経軸索が細くなり感覚障害が起こります。糖尿病の神経障害は通常、足の指や足の裏の感覚障害から始まります。じんじんとしたしびれ感や足の裏に餅が張り付いたような異常感覚、時にヒリヒリした痛みを認めます。また神経障害のひとつである自律神経障害の症状として頑固な便秘や下痢、起立性低血圧(たちくらみ)が認められます。慢性症状のほかに急速な血糖コントロールや低血糖の頻発によって痛みの強い神経障害を起こしやすいことも知られています。
 脳炎・髄膜炎 脳炎・髄膜炎とは脳や脊髄、これらを包む髄膜に炎症が起こった状態です。原因としてウイルスや細菌などの感染性、自己免疫システムの異常から炎症を起こす自己免疫性、薬剤性や腫瘍性などがあります。発熱・頭痛・悪心嘔吐・後頚部痛・けいれん発作が起こり、意識障害や異常行動など多彩な症状が起こります。出来るだけはやく受診しMRIなどの画像検査、腰椎穿刺による髄液検査などを行い総合的に診断しますが、早期診断と治療が重要です。

脳神経内科のコラム

糖尿病性神経障害について

糖尿病性神経障害は網膜症・腎症とならぶ三大合併症のひとつです。糖尿病早期から起こると言われ、心臓の働きを支配する自律神経障害を含むため生命予後にも関与することが知られています。糖尿病性神経障害は足の感覚が鈍くなり血流障害も合併して壊死になる知覚鈍麻型、切られるような痛みやビリビリ感が辛い知覚過敏・疼痛型、たちくらみや頑固下痢・便秘をきたす自律神経障害型に分かれますが、一人の方に混在して症状が出現することもあります。糖尿病性神経障害の研究・治療はミシガン大学研究員時代からの私のライフワークであり、中部ろうさい病院脳神経内科では皮内神経機能検査を用いて早期診断が可能です。糖尿病内科での血糖コントロールが最も大切ですが、神経機能の診断を脳神経内科に受診して把握することも糖尿病合併症の把握・治療には有効と考えます。

脳神経内科医として思うことー神経難病の患者さんへ

脳神経内科が担当する疾患には筋萎縮性側索硬化症、パーキンソン病などいわゆる神経難病が多数あります。これらの疾患の多くは長い治療期間が必要なばかりか治癒が困難な場合が少なくありません。神経内科医による病名告知は長い病気との付き合いの始まりを意味します。神経難病の診断を受けた患者さんやそのご家族は、最初はもちろん当惑される方がほとんどです。「難病」という言葉に怯えて先行きを悲嘆されるあまり治療に消極的になってしまう方も数少なくありません。私たち脳神経内科医は神経難病の患者さんとむきあい・寄り添うことを治療の大切な柱と考えます。そのため身体機能(ADL)の改善・維持のため最先端の治療法を紹介・実践することはもちろんですが、患者さんの生活の質(QOL)の向上のため、細々とした生活のアドバイスや特定難病制度・身体障害者などいろいろな制度の案内、介護保険利用の相談などにも対応しています。一番大切なことは患者さんやご家族の病気と向き合っていく姿勢です。私たちは患者さんが病気を抱えながら生きていく、その良き伴走者になることを心がけています。

慢性炎症性脱髄性多発神経炎(CIDP)について

CIDPとは手足の力が弱くなり、高いところに持ち上げられない、階段を登りにくい、足先がひっかかる、握力が落ちたなどの症状が数ヶ月の間に比較的ゆっくり進行する疾患です。運動症状だけでなく手足のジンジンとしたしびれや知覚鈍麻といった感覚症状が合併したりより優位なこともあります。末梢神経は脳からの運動刺激を筋肉に伝える運動神経、皮膚からの感覚刺激を脳に伝える感覚神経を含み、CIDPは末梢神経が自己免疫の異常によりリンパ球に攻撃されて炎症を起こします。CIDPは整形外科疾患や脊髄・筋肉の病気、脳梗塞などとの鑑別が難しく、診断には詳細な電気生理学的検査と専門医の診察が必要です。中部ろうさい病院脳神経内科にはCIDPの患者さんが多く、豊富な治療お経験から症例に適した治療法を選択することができます。CIDPは神経難病のひとつではありますが早期治療で良好なADLを維持できる可能性のある疾患であり、早期発見と適切な治療選択が重要です。


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