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小児科診療の停止について

呼吸器外科の診療内容

特色

【はじめに】

当科では、切開した創から胸の中を直接目で見て手術を行うのではなく、モニターに映る画面のみを見て手術を行う、「完全胸腔鏡下手術」を積極的に実施しております。この手術では、モニター画面で見ることで、細い血管やリンパ節を肉眼で見るよりも拡大して確認することができます。また、わきの下に1~2cm程度の穴を2~4個開けるのみなので、傷が小さく痛みも少ないです。最近は、小さい肺がんや縦隔腫瘍を中心に、さらに痛みや体への負担が少ない「単孔式手術」と呼ばれる3cm程度の穴を1つあけるだけの手術も行っております。

【完全胸腔鏡下手術で取り扱う主な疾患】

当科では、1.原発性肺がん 2.転移性肺腫瘍 3.縦隔腫瘍 4.気胸 5.膿胸 などを中心に、完全胸腔鏡下手術を行っておりますが、とくに、肺がんの完全胸腔鏡下手術に力を入れています。肺がんにおける完全胸腔鏡下手術は、通常1~2cm程度の3〜4つの穴を開け手術を行います(症例によっては穴が1つの単孔式手術を行うこともあります)。腫瘍を取り出すときに術者用の穴は腫瘍と同じ大きさ程度まで広げ、取り出し用の袋に腫瘍を含んだ切除肺を入れ、播種しないよう体外に袋ごと取り出します。
完全胸腔鏡下手術は身体に影響の少ない低侵襲の手術であり、4泊5日程度での退院も可能です。このため、当科では積極的に完全胸腔鏡下手術を行っております(適応は主に臨床病期0期~切除可能なⅢA期まで、2021年度に当科で行った胸部悪性腫瘍手術における完全胸腔鏡下手術が占める割合は87.6%でした)。

技術的には熟練を要する手術方法ではありますが、手術前に、3D-CTを用いた血管をはじめとする解剖の詳細に把握するなど十分な準備を行っており、大きな傷を伴う開胸手術と同等かそれ以上の安全性かつ根治性が期待できる手術方法と考えております。

また、従来は大きな傷で行われていた特殊な手術(スリーブ手術(気管支を切除吻合する気管支形成を伴った肺葉切除)など)においても、積極的に胸腔鏡下手術を行っております。

【メッセージ】

痛みや体への負担が少ない当院の完全胸腔鏡下手術は、持病のある患者さんや80歳以上の患者さんにも安心して受けていただいております。もう若くないから、体力に自信がないから、と手術をあきらめるのではなく、まずはお気軽に中部ろうさい病院呼吸器外科へご相談ください。

※手術創部のイメージ
例:肺がん

完全胸腔鏡下手術=通常

開胸手術

例:縦隔腫瘍

完全胸腔鏡下手術=通常

胸骨正中切開

【手術症例数】

年度 全症例 肺悪性腫瘍
※( )内は胸腔鏡手術数
2022 112 67(62)
2021 139 87(76)
2020 138 85(78)
2019 106 73(68)
2018 79 48(19)
2017 84 58(40)
2016 77 50(35)
2015 75 44(18)

医療連携

患者さんが安心して療養するために、当科は、地域医療機関との連携を非常に重要と考えております。近隣の医療機関からの紹介については、『迅速な対応、断らない診療』を心がけておりますので、胸部異常陰影など、胸のことでお困りのことがございましたら、お気軽にご相談ください。なお、スムーズに受診が行えるよう外来のインターネットWeb予約「C@RNA Connect)」が利用できるシステムを導入しております。


認定・研究等

  • 呼吸器外科専門医合同委員会専門研修連携施設
  • 日本外科学会外科専門医制度修練施設(指定施設)
  • 日本がん治療認定医機構認定研修施設

関連施設

産業医科大学 第2外科


主な疾患

疾患名 疾患の簡易解説
肺がん 肺がんは非小細胞がんと小細胞がんの2つに大きく分類されます。さらに非小細胞がんは腺がん、扁平上皮がん、大細胞がんなどに分類されます。日本人の肺がんで最も多いのは腺がんで、次に扁平上皮がんが多いです。腺がんなどの非小細胞がんでは一般的に臨床病期0期から3期の一部までが手術の適応で、それ以外の病期では化学療法(抗がん剤)や放射線治療を行います。一方、小細胞がんの多くは化学療法や放射線治療を行いますが、早期の場合は手術を行うこともあります。
転移性肺腫瘍 転移性肺腫瘍とは、他の臓器でできたがんが血管やリンパ管をめぐって肺に到達し、できもの(腫瘍)になったものをいいます。もともと肺にある細胞ががんとなる、いわゆる(原発性)肺がんとは異なります。肺がんであれば、肺がんを専門とする医師が治療方針を決定しますが、転移性肺腫瘍の場合、その腫瘍の顔つきがおおもとのがん(原発巣)と同じであるため、原発巣を担当する医師が治療方針を決定し、もし手術が必要であれば当科で手術を行います。
縦隔腫瘍 右と左の肺に挟まれた部分を縦隔といい、上縦隔、前縦隔、中縦隔、後縦隔に分類されます。これらの縦隔に発生する腫瘍のことを縦隔腫瘍といい、その中で最も多いものが胸腺腫です(約40%)。縦郭腫瘍は、多くの場合症状がありませんが、腫瘍が大きくなるにつれて、胸の痛みや違和感、呼吸困難や嗄声(声のかすれ)を認めることがあります。腫瘍の種類によって治療方針は変わりますが、手術を行うことが多いです。
悪性胸膜中皮腫 悪性胸膜中皮腫は、肺の表面をおおう胸膜と呼ばれる部位から発生する悪性腫瘍で、多くはアスベスト(石綿)が原因と言われています。初期の段階では症状がないことが多いのですが、腫瘍が大きくなると、胸の痛みや咳、胸水貯留による息苦しさを認めるようになってきます。非常に治りにくい疾患のため、手術や化学療法、放射線治療を組み合わせた集学的治療を行います。過去にアスベスト(石綿)を取り扱っており、現在、胸の痛みや咳などの症状がある方、その他ご心配がある方はご相談ください。
気胸 気胸(自然気胸ともいいます)は、"肺に穴があいて肺がつぶれる"病気です。ほとんどの患者さんは肺の表面にある肺のう胞(ブラともいいます)の破裂が原因で気胸になります。肺がつぶれるため、胸や背中の痛み、咳、息切れなどの症状が出現します。初めての気胸であり程度も軽い場合は、安静にして経過をみることが多いですが、そうでない場合は胸の中(胸腔)にドレーンという管を入れることもあります(胸腔ドレナージ)。胸腔ドレナージを行っても良くならない場合は、手術(胸腔鏡というカメラを使用した手術)が必要になります。
膿胸 膿胸とは、胸の中(胸腔)に膿や膿様の液体が貯留した状態のことをいいます。原因としては、肺炎などで肺の中に生じた炎症が胸腔におよぶことによって生じるものや、食道や肺などに対する手術後の合併症として発症するものなどがあります。症状としては、発熱や胸の痛み、息苦しさがあります。また、重症化するとショック症状(血圧低下、意識障害)を起こすこともあります。治療は、適切な抗菌薬の投与と膿をからだの外に出すこと(排膿)ですが、これらの治療を行っても良くならない場合は手術を行います。
その他 当科でのその他の対象疾患としては、胸壁腫瘍、肺嚢胞症、炎症性肺疾患(肺化膿症や肺アスペルギルス症など)、重症筋無力症、胸部外傷などがあり、肺移植以外の多岐にわたる呼吸器・胸部全般の外科治療を行っています。

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