呼吸器外科の診療内容
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特色
【はじめに】
当科では、切開した創から胸の中を直接目で見て手術を行うのではなく、モニターに映る画面のみを見て手術を行う「完全胸腔鏡下手術」を積極的に行っております。この手術では、モニター画面で見ることで、細い血管やリンパ節を肉眼で見るよりも拡大して確認することができます。また、わきの下に1~2cm程度の穴を2~4個開けるのみなので、傷が小さく痛みも少ないです。最近は、小さい肺がんや縦隔腫瘍を中心に、さらに痛みや体への負担が少ない「単孔式手術」と呼ばれる3cm程度の穴を1つあけるだけの手術も行っております。さらに、2023年7月からは、肺がんに対してロボット支援下による手術も開始しました。
【手術支援ロボットとは?】
皆さんは手術支援ロボットというのをご存知でしょうか。手術支援ロボットといっても、アニメのように巨大ロボットのコックピットに人間が乗り込み、ロボットを操作して手術をするわけではありません。
手術支援ロボットの多くは4本のロボットアームと呼ばれる機械の腕(アーム)を持っています。このロボットアームに接続した3D内視鏡カメラや鉗子と呼ばれる手術器具を、サージョンコンソールと呼ばれる操縦席から遠隔操作し手術を行います。このロボットアームは執刀医の手の動きを忠実に再現するので、手ぶれがなく、正確性の高い手術をすることができます。その他、以下に示すとおり、手術支援ロボットによる手術(ロボット支援手術)は、患者さんだけでなく手術を行う医師にも多くのメリットがあると言われています。
ロボット支援手術のメリット
| 患者さん側 | 医師側 |
|
・傷口が小さい |
・手ぶれがない(鉗子の安定性) |
|
・術後の疼痛が少ない |
・鉗子が動かしやすい(自由度が高い) |
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・手術中の出血量が少ない |
・術野が立体的で広く鮮明である(3D画像) |
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・術後合併症のリスクが少ない |
・術野が共有できる |
|
・回復が早い(早期の社会復帰など) |
・執刀医の負担が軽減できる(座っての手術) |
【呼吸器外科で行うロボット支援手術の現状】
2018年4月より日本国内で手術支援ロボットを用いた肺がん手術が保険適応となりました。その後急速に普及し、2022年には全国で約6500例の手術支援ロボットを用いた肺がん手術が行われています。これは、肺がん手術全体の約15%を占めるほどになっております。中部ろうさい病院には2023年7月に手術支援ロボット『ダヴィンチXi』が導入され、当科でも肺がんに対してロボット支援手術を実施しております。
ロボット支援手術の様子


サージョンコンソールに座って手術を行う執刀医
【完全胸腔鏡下手術で取り扱う主な疾患】
当科では、1.原発性肺がん 2.転移性肺腫瘍 3.縦隔腫瘍 4.気胸 5.膿胸 などを中心に、完全胸腔鏡下手術を行っておりますが、とくに、肺がんの完全胸腔鏡下手術に力を入れています。肺がんにおける完全胸腔鏡下手術は、通常1~2cm程度の3?4つの穴を開け手術を行います(症例によっては穴が1つの単孔式手術を行うこともあります)。腫瘍を取り出すときに術者用の穴は腫瘍と同じ大きさ程度まで広げ、取り出し用の袋に腫瘍を含んだ切除肺を入れ、播種しない(がんが散らばらない)ように体外に袋ごと取り出します。
完全胸腔鏡下手術は身体に影響の少ない低侵襲の手術であり、4泊5日程度での退院も可能です。このため、当科では積極的に完全胸腔鏡下手術を行っております(適応は主に臨床病期0期~切除可能なⅢA期まで、2024年度に当科で行った胸部悪性腫瘍手術における完全胸腔鏡下手術が占める割合98.6%でした)。
技術的には熟練を要する手術方法ではありますが、手術前に、3D-CTを用いた血管をはじめとする解剖の詳細に把握するなど十分な準備を行っており、大きな傷を伴う開胸手術と同等かそれ以上の安全性かつ根治性が期待できる手術方法と考えております。
また、2023年7月からは肺がんに対するロボット支援手術を開始しており、2025年11月までで46例の肺がんに対する肺葉切除術を行っております。
【メッセージ】
当科ではモニター視のみの完全胸腔鏡下手術をはじめ、穴が一箇所の単孔式手術など、痛みや体への負担が少ない手術を積極的に行っております。また、2023年7月、名古屋南部地域においてはじめて当院に手術支援ロボット「ダヴィンチXi」が導入され、当科でも肺がんに対するロボット支援手術を開始いたしました。
「完全胸腔鏡下手術、単孔式手術、ロボット支援手術」を駆使することによって、持病のある患者さんや80歳以上の患者さんにも安心して手術を受けていただいております。もう若くないから、体力に自信がないからと手術をあきらめている方やロボット支援手術にご興味のある方は、ぜひお気軽に中部ろうさい病院呼吸器外科へご相談ください。
手術創部のイメージ
例:肺がん
□完全腹腔鏡下手術=通常


例:縦隔腫瘍
□完全胸腔鏡下手術=通常

□胸骨正中切開

医療連携
患者さんが安心して療養するために、当科は、地域医療機関との連携を非常に重要と考えております。近隣の医療機関からの紹介については、『迅速な対応、断らない診療』を心がけておりますので、胸部異常陰影など、胸のことでお困りのことがございましたら、お気軽にご相談ください。なお、スムーズに受診が行えるよう外来のインターネットWeb予約「C@RNA Connect)」が利用できるシステムを導入しております。
認定・研究等
- 呼吸器外科専門医合同委員会専門研修連携施設
- 日本外科学会外科専門医制度修練施設(指定施設)
- 日本がん治療認定医機構認定研修施設
関連施設
主な疾患
| 疾患名 | 疾患の簡易解説 |
|---|---|
| 肺がん | 肺がんは非小細胞がんと小細胞がんの2つに大きく分類されます。さらに非小細胞がんは腺がん、扁平上皮がん、大細胞がんなどに分類されます。日本人の肺がんで最も多いのは腺がんで、次に扁平上皮がんが多いです。腺がんなどの非小細胞がんでは一般的に臨床病期0期から3期の一部までが手術の適応で、それ以外の病期では化学療法(抗がん剤)や放射線治療を行います。一方、小細胞がんの多くは化学療法や放射線治療を行いますが、早期の場合は手術を行うこともあります。 |
| 転移性肺腫瘍 | 転移性肺腫瘍とは、他の臓器でできたがんが血管やリンパ管をめぐって肺に到達し、できもの(腫瘍)になったものをいいます。もともと肺にある細胞ががんとなる、いわゆる(原発性)肺がんとは異なります。肺がんであれば、肺がんを専門とする医師が治療方針を決定しますが、転移性肺腫瘍の場合、その腫瘍の顔つきがおおもとのがん(原発巣)と同じであるため、原発巣を担当する医師が治療方針を決定し、もし手術が必要であれば当科で手術を行います。 |
| 縦隔腫瘍 | 右と左の肺に挟まれた部分を縦隔といい、上縦隔、前縦隔、中縦隔、後縦隔に分類されます。これらの縦隔に発生する腫瘍のことを縦隔腫瘍といい、その中で最も多いものが胸腺腫です(約40%)。縦郭腫瘍は、多くの場合症状がありませんが、腫瘍が大きくなるにつれて、胸の痛みや違和感、呼吸困難や嗄声(声のかすれ)を認めることがあります。腫瘍の種類によって治療方針は変わりますが、手術を行うことが多いです。 |
| 悪性胸膜中皮腫 | 悪性胸膜中皮腫は、肺の表面をおおう胸膜と呼ばれる部位から発生する悪性腫瘍で、多くはアスベスト(石綿)が原因と言われています。初期の段階では症状がないことが多いのですが、腫瘍が大きくなると、胸の痛みや咳、胸水貯留による息苦しさを認めるようになってきます。非常に治りにくい疾患のため、手術や化学療法、放射線治療を組み合わせた集学的治療を行います。過去にアスベスト(石綿)を取り扱っており、現在、胸の痛みや咳などの症状がある方、その他ご心配がある方はご相談ください。 |
| 気胸 | 気胸(自然気胸ともいいます)は、"肺に穴があいて肺がつぶれる"病気です。ほとんどの患者さんは肺の表面にある肺のう胞(ブラともいいます)の破裂が原因で気胸になります。肺がつぶれるため、胸や背中の痛み、咳、息切れなどの症状が出現します。初めての気胸であり程度も軽い場合は、安静にして経過をみることが多いですが、そうでない場合は胸の中(胸腔)にドレーンという管を入れることもあります(胸腔ドレナージ)。胸腔ドレナージを行っても良くならない場合は、手術(胸腔鏡というカメラを使用した手術)が必要になります。 |
| 膿胸 | 膿胸とは、胸の中(胸腔)に膿や膿様の液体が貯留した状態のことをいいます。原因としては、肺炎などで肺の中に生じた炎症が胸腔におよぶことによって生じるものや、食道や肺などに対する手術後の合併症として発症するものなどがあります。症状としては、発熱や胸の痛み、息苦しさがあります。また、重症化するとショック症状(血圧低下、意識障害)を起こすこともあります。治療は、適切な抗菌薬の投与と膿をからだの外に出すこと(排膿)ですが、これらの治療を行っても良くならない場合は手術を行います。 |
| その他 | 当科でのその他の対象疾患としては、胸壁腫瘍、肺嚢胞症、炎症性肺疾患(肺化膿症や肺アスペルギルス症など)、重症筋無力症、胸部外傷などがあり、肺移植以外の多岐にわたる呼吸器・胸部全般の外科治療を行っています。 |
